yomitaikimochi’s diary

読んだ本の記録

バタフライ

ユスラ・マルディニ、ジョジー・ルブロンド著、土屋京子訳、朝日新聞出版(Kindle版)

本日の読了は、シリア人の少女が戦火を逃れてドイツにたどり着き、難民選手団の一員として五輪に出場するまでの道程を描いた回想録です。厳しい父の指導のもと、競泳のシリア代表の座を勝ち取った矢先、少年の落書きに端を発する内戦が勃発。自宅も砲撃を受け、安全な場所を求めてダマスカス市内を転々とします。それでも、練習や学校、夜遊びもするティーンエイジャーの日常は変わりません。しかし、プールに不発弾が落下。ドイツに行くことを決意します。ディーンの視点から見た逃避行は、希望や楽観に満ちていて、深刻さがあまり感じられず、冒険旅行みたいです。でも、ドイツに着いてから、中東人であること、難民であることを否応なく自覚させられ、難民選手として五輪に出場し、スポークスマンという立場を受け入れるまでの心の葛藤は、社会のあり方とか、マスコミのあり方について、多くの問いを投げかけています。土屋さんのディーンらしい臨場感のある訳文が素晴らしいです。また、地図が見易かった。

難民観が180度変わる一冊でした。

今回は、Alexaの読み上げ機能を利用しました。文章は誤読が少なく、意味を理解する分には問題ありません。地図や写真はfireタブレットであれば拡大ができ細部が確認できました。